川井拓也著 「USTREAM 世界を変えるネット生中継」
以前、「知ってるつもり?!」というテレビ番組があった。著名人の生涯をたどる、という感じの番組。最初のうちは熱心に見ていたのだけれど、いつからか、どうにもいたたまれなくなって、見るのをやめてしまった。それはなぜかというと、
「誰の人生も同じに見えるから」
だ。とにかく誰の人生を取りあげても、全部同じようなパターンなのだ。おおまかに言うと、こんな感じ...
1. 最初は無名で苦労する。
2. なかなか芽が出ない。
3. あきらめかけた時に思いがけない幸運が訪れ、成功する。
4. しかし、しばらくすると苦悩に襲われる。
5. 皆に成功を羨まれながら、人知れず悩む。
6. そばにいる人(男性なら女性、女性なら男性)の献身的な支えもあって、立ち直る。
7. 新たな境地へ...
細かいところは、違うことも多々あったとは思うけれど、こういう印象。
誰の人生も同じってことは絶対にないと思うのだ。最初からすぐに成功して、後、そんなに苦悩しなかった人もいるだろうし、成功した瞬間ですらずっと苦悩していた人もいただろう。最後まで立ち直らなかった人もいるだろうし。そばにいる人に支えてもらうどころか裏切られ酷い目に遭わされた人もいただろう。
成功した人はみんながみんな人知れず苦悩を抱えていた、なんてことを毎週毎週言われていたら、そのうち、「成功した人は苦悩する」というのが当たり前になってしまう。「意外なことに、あの人にもこんな苦悩が」なんて言われても、もうまったく意外に思わない。かえって、「成功して、その後は有頂天のままですね。あの人は。実に羨ましい」なんて言われた方がびっくりする。
....と、こういうことが起きるのは、「編集」をするからである。編集をする人が最初に「この切り口で」と決めてしまえば、だいたいどんな人生だって、同じシナリオにまとめることができるのだろう。「知ってるつもり?!」に限らず、いつからか、内容じゃなくて「切り口」を見せられているような番組が多くなって、それで、だんだんテレビ(地上波)を見るのがイヤになってしまった...
そこへ登場してきたのがUSTREAMである。多くの映像は、素人が作り、ただ垂れ流される。「編集」などというものはほとんどされていない。作り手の伝えたいことがあったとしても、それと同時に大量のノイズが同時に流れる。決して見やすくはない。
だが、だからこそ、見方はこちらで自由に選べる。こういう切り口で見なさい、と強制されることはない。一人一人が勝手な切り口で見ればいいのだ。
USTREAMの何もかもが良い、というわけではないけれど、押しつけ、強制がないのは嬉しい。テレビはきっと、「何千万人が同時に見て、誰もがわかり、共感できるように」と考えたら、ああなってしまったのだろう。でも、世の中には、音楽家の恋愛や芸人の苦悩よりも、作品や芸の方に興味がある人だっているのだ。作者の人生なんて別に知りたくない。業績だけが知りたい、そういう人もいるのだ。何千万人というわけにはいかないけれど。
100人、1000人を相手に作ればいい番組なら、無理な切り口は必要ないだろう。今は垂れ流しが多いけれど、そのうち、100人、1000人に合わせた切れ味鋭い編集をする人が現れるに違いない。これからが実に楽しみだ。とにかく、みんなが一斉に同じ番組を見る、なんていう時代が異常だったのだと思う。
ダダ漏れ。

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